八十三
打者江藤。たぶん、きょう最後の打者になる。江藤は常に正攻法でいく。真っすぐだろうと変化球だろうと、ボールのくるところへ虚心にバットを出す。そして全力で振る。山本に対するきょうの二打席は三振だ。
初球、横滑りのカーブ、空振り。ヘッドアップせず、しっかり球筋を睨みながら振っている。とにかく振る。空振りを恐れず振る。振らなければ当たらない。次は縦落ちのカーブか。江藤が打席の奥まで退がった。打つ、と思った。二球目、カーブが真っすぐ落ちてくる。技巧派は研究される宿命なのだ。いつか引導を渡される。江藤は背中を丸めて掬い上げた。芯より少し内側だ。しかしすばらしい角度がついた。菱川が叫ぶ。
「オオッシャー、留めェ!」
みんなでいっせいにベンチを飛び出す。詰まった白球が低い弾道を描きながら、ラッキーゾーンで投球練習している水谷寿伸と若生めがけて飛んでいく。ゾーンを越えてスタンド最前列に刺さった。江藤が長谷川コーチとタッチする。一塁スタンドから、
「好きにせいや!」
「江藤、よう打った、勘弁したる!」
「ついでに神無月もいけや、許―す!」
江藤が水原監督とガッシリ抱擁する。花道の仲間たちが背中に飛びついたり、尻を平手で叩いたりする。私も胸に抱きついた。
「江藤さん、ナイスバッティング!」
「まねせんとけ。金太郎さんの打法を通すんやぞ」
「はい」
十二対三。何点でも取ってやる。ボックスの最前部に出て、曲がりはじめが早すぎるカーブを二球空振り。背が足りない。三球目、わずかにジャンプして上半身だけを回転させながら、右手一本で遠くのボールに向かってスイングする。先っぽに当たった。ピッチャーの左を抜け、二遊間の深いところへ転がる。全力疾走。藤田平が二塁ベースの後方で跳びついて捕球し、起き上がりざま一塁送球。セーフ! 大喝采。長谷川コーチが握手し、
「うちのみんなの情熱が球場を揺すぶったね。阪神ファンまで喜んでるよ」
「敵味方一丸。これがプロ野球ですね」
五番木俣、高々と上がるショートフライで全攻撃を締めくくった。
九回裏。戸板続投。三番藤田から。軽いスイング、痛烈に抜けていくライト前ヒット。バレンタイン、フォアボール。田淵、きょうの初安打が左翼席中段に舞い落ちるスリーランホームラン。これで阪神ファンはすっかり留飲を下げた。
「戸板、ありがとう! うまい盤めしが食えるわ!」
戸板はすぐに持ち直し、遠井、後藤、山本の代打和田徹と三者連続三振。これも彼らの微笑のもとになった。被安打二、フォアボール一、三振三つで八回九回と完了。戸板のローテーション入りが決まった。
四時七分試合終了。十二対六。勝利投手伊藤久敏、敗戦投手江夏。十連勝。ひさしぶりのインタビュー。
「きょうもジャンプしてヒットを打ちました。レフト上段のホームランもみごとでしたが、総合的にははやられたということになりますか」
「やられました。でも質の高い野球を見せてもらえました。真剣に野球をやっていると、学ぶことが次々に出てきます」
「みなさんものすごい根性でしたね」
「ハタから見れば根性論、近くで見れば技術論。その合体が職人の世界です」
「いよいよ日米戦です。抱負をお伺いします」
「これまでどおり、出場する全打席ホームランを打つつもりでいきます」
「期待しています」
「がんばります」
次々とインタビューが移っていき、五時を過ぎてようやく帰りのバスに乗った。人だかりがバスを取り囲んだが、何の悶着も起こらなかった。野次も穏やかなものが多かった。
「柳の下にはもうドジョウはおらんぞォ」
「シーズン入ったら阪神と首位争いやぞ。覚悟しとけや!」
バスの中で水原監督が、
「きょうも全力勝負、ありがとう。浮足立つこともなく、十連勝いたしました。公式戦前の練習試合と見なされるオープン戦には、ご存じのとおり、投打の公式表彰も優勝の公式表彰もありません。毎年、チームの勝率や、打者の安打数や本塁打数、投手の勝ち数や防御率等をマスコミが大げさに騒ぎ立てるだけのことです。ただ、チーム内での個々の処遇には影響してきますので、めいめいがんばっているという塩梅です。残り二試合ですが、おさおさ怠りなく奮闘していただきたい」
「ウス」
ホテルに戻り、シャワーを浴び、グローブ、スパイク、帽子、ユニフォームやタオルやジャージをダッフルにしまい、バットケースを重ねる。ルームサービスでビーフカレーをとる。
パンツとシャツの姿で、六時から仮眠。三十分ごとに目覚め、七時半に起きて歯磨き、忘れ物のチェック。ワイシャツとブレザーを着る。仲間たちがたむろしているロビーに降り、ダッフルとバットケースを郵送カウンターに出す。
ソファに座ってぼんやりする。足木マネージャーがやってきて、
「そろそろ八時のバスが出ます。乗る予定になっているかたは一枝さん、江藤さん、神無月さん、木俣さん、小川さん、菱川さん、太田さん、星野さん、谷沢さん、戸板さん、田辺さん、佐藤さん、渋谷さんの十三人です。ちゃんといらっしゃいますか」
「ウース」
一枝が、
「俺、新大阪でお別れだから」
「わかってます。九時三分のこだまの乗車券とグリーン券を十二人のかたにお渡ししておきます。新大阪に着いてから十何分か余裕があります」
一人ひとりに切符が配られる。伊藤久敏がやってきて、
「これ、幻の女も含めて、面白そうな推理小説を書き出しておきましたから」
メモを手渡してエレベーターへ去った。私はメモをポケットにしまった。
玄関に十人近く、ホテルマンや仲居たちが立ち並んだ。辞儀をしたり握手したりする。中にハツもいたので強く見つめて握手する。足木マネージャーに見送られて館裏の駐車場からバスが出る。十三人、いつも監督コーチたちが座るバスの前部に腰かけて、フロントガラスを見つめる。運転手の後頭部が静かだ。国道43号、いわゆる浜手幹線に出、平べったい夜の街を走る。太田が、
「芦屋市、その隣の尼崎市までが兵庫県です」
「名前がないと、どこがどこやら区別がつかない」
「住めば都というのは、そういう意味ですね」
「うん、住みつけばどんな土地も精神的満足を得られるということだね。外国だけはいやだけど」
木俣が、
「だいぶ大リーグ連中が観にきてたな」
小川が、
「あさっての下調べだろう。金太郎さんの獲得はもうあきらめてるよ」
菱川が、
「きょうの逆方向百四十メートルの弾丸ライナーにはヨダレが出たでしょうね」
江藤が、
「食い物が手に入らんっちゃけん、むだなヨダレたい」
左手に成田山神社。渋谷が一枝に、
「阪神ファンが今年あそこまで自信があるのはなぜですかね」
「村山選手兼任監督のせいだな。沢村賞三回、最多勝二回、最優秀防御率二回、最多奪三振二回、最高勝率一回、MVP一回、ベストナイン三回。とくに防御率はすごくて、戦後でただ一人零点台を記録してるし、通算防御率はいまのところセリーグ記録じゃないか。今年も最優秀防御率を獲ると思うよ。ま、そんなふうに監督が超実力選手ということに加えて、彼がこのキャンプで出した〈御誓文〉のせいもあるね」
太田が、
「有名ですね。デイリーに載ってました。ボーリングとビリヤード禁止、麻雀は時間と場所を決めてやる、朝の体操八時十五分・朝食九時、休日前の門限なし、練習開始時間厳守」
私は、
「監督が日常のルールを発表したことが異例だったんだろう。あたりまえのことばかりだな。ゴルフを禁止してないのが笑える。そういうのを聞くと、プロ野球選手のくせに野球が好きじゃないのかなってつくづく疑問になる」
菱川が、
「おととしまでは俺もそうでした。野球が好きかどうかは、よほどの転機がないと考えないんですよ」
右手に甲子園球場のシルエットが見えてくる。
「あんなすばらしい球場で野球ができるのに、宝の持ち腐れですね」
江藤が、
「ワシはゴルフは二、三回くらいしかしたことがなかばってん、ゴルフだけは勘弁してやってくれんね。巨人が川上の現役時代からゴルフコンペにほとんど強制的に参加させるようになってから、全チームの慣行行事になったっちゃん」
谷沢が、
「昭和になってすぐ日本でゴルフが知られるようになって、十年も経たないうちだったんですよね。シーズンオフの運動不足を解消する、ゴルフは野球の技術の向上に通じる、と言って」
「オフの運動不足は個人の怠惰のせいだし、静止したボールを相手にするゴルフは野球の技術向上とはいっさい関係ないと思います。懇親会とハッキリ言えば、精神的なリラックスを計ってるとわかります。でも社交目的ということ自体あまり感心はしません。そこには経済界や芸能界、マスコミなども入りこんでくるでしょうから、精神的に不衛生なリラックスです。何らかの鍛錬、あるいは趣味が昂じたものと考えてもいい例はあります。独りでもやりにいく高木さんのような人にはうなずけるんです。……とにかくぼくはチャラチャラした印象のものは好みません。他人の行動を制限するつもりはないし、じつは興味もないので、誘われてもいきません。ご迷惑じゃないですよね」
田辺が、
「迷惑なんてとんでもないですよ。その〈壁〉が私は好きです。近鉄時代にそういう人がいてくれたら、くだらない時間をすごさずにすんだのにと思います」
戸板が、
「オラはやらね。ドラゴンズはそれが許されるチームだすけ」
木俣が、
「俺も去年からゴルフをやめた。家族サービスができる時間が増えたよ。それがほんとうのリラックスだからね」
右手に武庫川女子大の大校舎。一枝が、
「日本を代表するマンモス女子大だ。大映の女優安田道代がここ出身」
ああ座頭市に出ていた女か、最近ではピンクものにも出ているな、と思った。武庫川を渡る。太田が、
「この川を越えると尼崎市です」
やがて二本の川を渡り、左折してゆるやかに北上する。淀川通りという標示がある。大阪市に入ったということか。
「江夏の被本塁打数とフォアボールの数はどのくらい?」
太田に訊く。
「どちらもセリーグ上位三本指です」
「やっぱりそうか。勝負根性の代償だね。見返りは常に奪三振一位。相当アタマの回るピッチャーだから、三振を食らわないようにすればいいんだ。つまり、対戦のたびに読み合戦をしなくちゃいけない。きた球を打つというわけにはいかないんだ。球が思ったところにきてくれないからね。きょうの山本みたいな、くる球は決まってるけどつかまえにくいピッチャーは、読みは必要なくて技術だけを工夫することになる」
「プロのピッチャーは厄介ですね」
「うん、厄介だ」
歌島橋から塚本、北野高校と夜桜の美しい十三公園のあいだの道を通って、鋭角的に北上する。低い家並が色彩豊かになる。くねくねと信号ごとに曲がる。都会ふうの建物と立木が増える。静かな夜の大阪。無口な佐藤進が、
「大阪というと食いだおれ横丁の繁華なイメージですが、こんなに静かなんですね」
一枝が、
「都心に近いわりにという意味でね。おまえ、クニは?」
「北海道の札幌郡豊平です」
「そうか、北海高校だったな」
「はい。静かと言うより、民家と川に囲まれた田舎という感じですね」
「そこからポッと大東京へ出てきたわけか。静かな都会というのはあまり見たことがないんだな」
「はい。札幌市に出るとモロに賑やかなビルの群れですから」
「なるほどな。都心に近いと、とんでもなく賑やかな街もいくつかあるけど、ちょっと離れるとだいたい静かビル街なんだよ。大東京に比べればな。東京はどこもかしこも賑やかすぎる」
小川が、
「佐藤は、国鉄からアトムズまで七年か」
「はい、国鉄スワローズ、サンケイスワローズ、サンケイアトムズ、アトムス」
「そして移籍したとたんにヤクルトアトムズ。弱小国鉄、身売り、身売りの連続だったよな」
「わけもわからず野球をしてました」
「ずっと東京暮らしじゃ、盛り場ばかり目にしてきたろ」
「そうです。あとは遠征先の盛り場」
木俣が、
「甲子園遠征も定宿がちがってただろうから、バスじゃなく電車で大阪へ戻って、飛行機で羽田に帰ってたわけだ。九州も広島も飛行機、名古屋は新幹線で往復。いずれにしても在京球団の移動は交通が便利だから、こういう静かな都会風景にはめったにお目にかからない」
「そうですね。ドラゴンズにきていろいろ経験させてもらってます」
一枝が、
「大阪も東京と似たようなもんだけど、メガ都会とまではいかないから、賑やかさがストンと抜け落ちてる場所が多い。福岡も、広島も、静岡もな。中小規模の都会ってのはバラエティがあって楽しいもんだ。名古屋だってそうだぞ。おまえも東京以外の都会に居つくわけだから、だんだんよさがわかってくる。札幌に居ついてもいいけど、ビルの周りがすぐ自然じゃバラエティがない。それに札幌にはプロ球団がないしな」
八十四
八時五十一分、新大阪駅到着。運転手に礼を言って降り、みんなで一枝に手を振ってから、新幹線改札口に向かう。人通りは多いが、勤め人が家路を急ぐ時間帯なので、私たちにわざわざ視線を留めて立ち止まる人はいない。小川がコンコースに靴音を立てながら、
「名古屋まで一時間余りか。……俺の選手生活はあと八カ月。この一時間は貴重だな。俺さ、今年ばかりは、野球の時間よりこういう時間を大切にしたいんだよ」
江藤が、
「ワシは去年のキャンプからそぎゃん気持ちになったばい。したら野球も二倍、三倍楽しゅうなった」
菱川が、
「俺はオープン戦のころからです。新しく入団した連中や、移籍してきた連中は幸せだと思うな。こういう人間関係がどれほど異常なものかわからないから幸せだ」
木俣が、
「金太郎さんと名古屋観光ホテルから名古屋駅まで歩いて帰ったときは、信じられないほど幸せだった。幸せは満喫しないと」
「はい!」
秀孝が大声を出した。小太りの渋谷が思わず、ハイ! と声を合わせた。何人か声の出どころを確かめるように中空を見やったが、私たちには気づかなかった。コンコースの人混みに紛れた二人の大声が、この先つづくだろう私たちの幸福な協和を保証している気がした。
新幹線ホームから北村席へ電話を入れ、九時三分のこだま静岡行に乗る。京都、米原、岐阜羽島、そして名古屋。私は佐藤に、
「札幌ってどういうところですか」
「広いです。北に石狩湾があって、西と南が山地です。市街は整然と区画されてて、東に札幌飛行場、中心部に北大があります。北大の周囲は閑静な住宅街です。大学の南に接するように国鉄札幌駅があって、その二キロほど南にすすきのという歓楽街があります。札幌駅とすすきののちょうど中間あたりに、有名な」
「時計台?」
「はい。すすきのから四、五キロ西に円山球場があります。すすきのから豊平川を越えた対岸に北海高校があります。豊平川というのは石狩川の支流です」
小山田さんや吉冨さんたちはいま札幌にいる。
「札幌はいま地下鉄工事をしてますよね」
「はい、来年十二月の冬季オリンピックに向けてやってます」
太田が、
「西松の人たちですか?」
「うん、大恩人たち。東京で偶然再会して以来会ってない。もし来年円山球場で試合をすることがあったら会いにいく」
江藤が、
「中日はふつう円山球場で試合することはなかよ。あそこは巨人専用の球場で、相手は中日以外の四球団と決まっとるばい」
「そうですか……」
江藤はニヤリと笑い、
「ばってん、今年は六月六日から大洋三連戦を北海道でやることになっとうたい。二日目のダブルヘッダーが円山球場ばい」
「ほんとですか!」
「おう。十年二十年にいっぺんのことやろう。西松ごつ大会社の予定やらすぐわかるっちゃん。都合のつく場所に会いにいけばよかろうもん」
「はい!」
谷沢がみんなに車内販売のコーヒーを振舞う。
「戸板さんは日本軽金属でしたね」
「はい」
「今年、稲葉といういいピッチャーがいますよ」
「一年後輩だ。回転の利いた球を投げます。カーブがいいでば。中日にいきてってへってらった」
「戸板さんの後輩ということで、水原さんなら採るかもしれませんよ」
菱川が、
「渋谷」
「はい」
「島谷は四国電力でおまえの先輩だっただろう」
「はい。でも俺はピッチャーなので、そういうことで獲ってくれたんじゃないと思いますけど、島谷さんと似たようなドラ八でした」
笑いが上がる。江藤が、
「下位ドラフト選手は実力者が多いけん、うちはよう使うくさ。お前は浜野百三よりはるかに活躍するとワシは睨んどる。がんばれよ」
「はい!」
私は江藤に、
「法元スカウトは今年三沢という選手を狙ってると聞きましたが」
「三沢は社会人で一年やりたか言うとるげな。榊さんは大府高校の氏家を狙っとるて言うとったのう。球が速うて、フォームはロッテの小山に似とるちゅうて。健太郎と小野親分の抜けたあとを埋めるには、秀孝、戸板、若生、田辺、渋谷、川畑、佐藤、ベテランの伊藤久敏、水谷寿伸で九人か。二軍の松本幸行はどう化けるかわからんし、来年はあと二人は必要やろう。野手は向こう四、五年、一人も要らん」
木俣が、
「四、五年のあいだ金太郎さんが百本、俺と慎ちゃんで八十本から百本、菱とタコが六十本以上打てば、五連覇できるな」
「皮算用たい。ワシはもう四十本以上打てんごたる。達ちゃんが五十本以上を目指さんば」
谷沢が、
「ぼくは十五本を目指します。できるだけ早いうちに二十本打てるバッターになるようがんばります」
「利ちゃんが引退するまであと何年もなかぞ」
「はい!」
十時九分、名古屋に着いた。改札に名大生四人が迎えにきている。谷沢たち新入団組五人が瞠目した。江藤たちが得意そうに笑う。
「一回驚いて免疫作っておかんとな」
ここは人通りが少ないので私たち十二人は目についた。ほうぼうから激励の声がかかる。私たちは声の方向に微笑を振り向けながら、木俣を国鉄の改札に見送り、タクシー乗り場に向かう江藤たちに五人で手を振ってから、北村席に帰っていく。この一年で人目という人的なものが建物や樹木のような自然な環境になりつつある。環境に視線をやり、微笑みかける。ヒデさんが、
「プロ野球選手がズラッと並ぶと壮観ですね。選ばれた人たちって感じ」
千佳子が、
「どうしたって注目しちゃうわ。注目に慣れないと神経すり減らしちゃう」
「同化すること。こちらも眺めればいい。自然の景色だと思ってね。急いでないかぎり、みんなそうやって歩いてるでしょ。あ、そうだ、あしたの午後あたり、袋入りのビーフシチューが届くよ。おいしいから夕食で食べてね。ぼくは食い飽きた」
睦子が、
「竹園旅館は肉で有名ですものね」
「しつこいくらいね。和食が恋しくなる。でもきょうベンチに持ってった昼めしはビーフサンドだった。笑っちゃうね」
門前に主人と菅野が出迎える。
「お帰りなさい!」
「ただいま」
「逆方向、百四十五メートル、ものすごかったわ」
「ありがとうございます」
「さ、ゆっくりして」
開け放った玄関にカズちゃんたちが出迎える。ジャッキが飛びついてくる。ソテツが、
「お帰りなさいませ。お腹は?」
「少し減ってる。きしめんと一膳めし」
「はい。みなさんもどうぞ。神無月さんも一人で食べるよりは楽しいでしょう」
きしめんだけと言う手が五、六人挙がる。賄いたちが忙しくなる。百江とメイ子も手伝う。
「みんな、遅くまでごめんね」
厨房に声をかけると、幣原が、
「いいんですよ。みんなで『火曜日の女』を観てましたから。途中でやめても惜しくない番組です」
よくわからない。女将が、
「女向けの探偵ものやがね。あした雪が降るそうやよ。あったかくして寝んと」
「はい、気をつけます。股引を穿いて寝ます」
きしめんが出て、菅野や素子やキッコたちとすすりはじめる。カズちゃんとヒデさんもおいしそうにすすっている。素子が、
「うちらお姉さんにドッサリ服を買ってもらったんよ」
睦子が、
「それを着て、あさって中日球場にいきます」
「手を振るよ」
ヒデさんが、
「直人くん、背番号8のユニフォーム着ていくんですって」
チャンネルが東海テレビの『ふるさと紀行』に切り替わる。名鉄提供というのが何か楽しい。読まない、観ない、などと無理に切り捨てることもない。読む機会や興味があるなら読めばいいし、観る機会や興味があるなら観ればいい。それも日常の自然な風景だと思えば微笑して過ぎることができる。とは言え、〈名作〉は二度と読まない。
ふと思い出して、伊藤久敏から手渡されたメモをポケットから取り出して見る。三冊の本の名前が書いてあった。ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫)、ウイリアム・アイリッシュ『幻の女』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)、ダシール・ハメット『マルタの鷹』(創元推理文庫)。
「カズちゃん、二十八日までにこの三冊の本を買っといて。ぜんぶ推理小説」
「ついにそこまできた!」
「伊藤久敏というミステリー好きのピッチャーが薦めてくれた本なんだ」
「ああ伊藤さん、中継ぎのエース」
「うん。ついにそこまでと言うほどぼくは本を読んでない。世界の本の一パーセントを読むのにだって千年はかかる。あちこちの道を歩くのと同じだよ。達成できないものは、偶然足もとにあるものを拾い上げるしかない。……ま、そんな立派な理屈じゃなく、ホテルの暇な時間を持て余しちゃっただけなんだけどね。飽きっぽいから、一冊でやめてしまうかもしれない」
「あした買っておくわ。私も読んでみよう」
メイ子がメモを覗きこみ、
「マルタの鷹って、だいぶむかし映画で観ましたけど、これおもしろいの? て感じでしたよ。ハンフリー・ボガードが渋いだけで」
「ぼくも観た。おもしろくないね」
「活字で読めばまたちがうかもしれないわよ。暇つぶしにはいいでしょう。退屈って、たっての苦しみだから」
菅野が、
「あしたは?」
「走ります。九時」
「了解」
「三十一日の花見は、秀樹くんと奥さんも連れてきてね」
「そうします。社長、座って飲み食いしながら花見ができる場所は名城公園ですね。正門前に大きな駐車場もありますし」
「ほうやな。城も見えるしな。四月前やから人もあまりおらんやろう」
女将が、
「ゴミ袋たくさん持ってかんと」
優子が、
「私も百江さんもアヤメは休ませていただきました」
「ハイエース三台やな」
「そんなに要りますか」
「おう、台所もぜんぶ連れてくで。北村席に鍵かけるわ」
幣原が、
「あしたの午後、東奥日報さんがいらっしゃいます」
「あ、そうだった」
菅野が、
「当初浜中さんとカメラの恩田さんの二人だけでくるという予定だったのが、やっぱり録音の田代さんとビデオの丹生さんも加えて、四人でくることになったそうです。北村に一泊して、日米戦を取材したらその足で青森にお帰りになるという電話でした」
「あさってもハイエース三台やな」
「いや、お嬢さんたちは昼から別動ですから、二台でいいでしょう」
私は、
「西宮が終わったら二週間の休みだ。去年すっぽかしてしまった約束をきちんと果たしていかないと」
カズちゃんが、
「キョウちゃんのことだから、いろいろ約束してるかも」
ソテツが手を挙げて、
「去年のシーズンオフ、熊本から帰ったら、レコードでも買いながらデートしようとおっしゃってくれました」
「そうだった?」
「はい。年末の神無月さんはとても忙しかったから、お気の毒で言い出せませんでした」
まったく憶えていない。カズちゃんが、
「キョウちゃん、ひどいわよ、それ」
「ごめんね、すっかり忘れてた。ソテツはクラシックが好きだったね。うーん、四月の初めしかないな。開幕前の四月一日か。その日は厨房は休みをとって」
「はい」
「どこへいこうか」
「東山動物園。睦子さんたちもいっしょのほうがいいです。……二人っきりだと恥ずかしいから」
千佳子が、
「一日はちょうど空いてるわ。二日は教科書販売ガイダンス、三日は一年生のガイダンス」
睦子が、
「そんなの出なくていいんじゃない。二日と三日の科目履修登録を忘れなければ。五日は秀子さんとキッコさんの入学式のあと酔族館だし、七日はソテツちゃんと千鶴ちゃんの入学式、八日は素子さんの入学式」
カズちゃんが、
「あなたたち、ぜんぶ出るつもり?」
「はい。名大の授業開始は十一日なので。私たち、何でも参加したいんです。大学生は遊民の代表ですから。九日と十日は四人で一宮に万葉小旅行にいってきます」
八十五
一度部屋に引っこんでいた優子が紙袋を持って降りてきて、
「これは約束でも何でもないんですけど、去年のクリスマスに神無月さんに渡そうと思ってたプレゼントです。なかなか渡すチャンスがなくて……手編みのセーターとマフラーです。まだときどき寒い日もあるので、着てください。どちらもドラゴンズのチームカラーのライトブルーです」
ヒデさんがパチパチ手を叩き、
「自分の心の中の約束だったんですね」
女将がハンカチを出した。周りの女たちも涙ぐんでいる。菅野が立ち上がり、
「天童優子のロマンス。胸にきますね。お嬢さんを中心にした北村席の女性たちの求愛を神無月さんは、戸惑わず、悪びれず、率直に受け止め、エネルギーに変えて颯爽と生きてます。不思議な人間関係ですが、この図がとにかく胸にきます。この図を壊されないようにするために、どんなことにも尽力しますからね。じゃ、私はこれで失礼します。花見の席取りは当日でいいでしょう。お休みなさい」
「お休みなさい!」
みんなで応える。
「菅ちゃん、ご苦労さん。あしたもよろしくな」
「はい、ランニングのあとできます」
主人は菅野の背中を見送りながら茶をすすり、
「天皇や将軍のハーレムとだれも思わんところがワヤや。神無月さんにそういう権力者や独裁者のあくどい風格がないところがすごいんだわ。それがないのにこの状態やから、〈不思議な人間関係〉なんやな。世間に告げ口されたらたちまち後ろ指差される悲しい人間関係やけど、告げ口するやつがおらん。それどころか菅ちゃんみたいに守ろうとする。みんな神無月さんが好きやからや。もう一つ、神無月さんも和子たちも命懸けでケツまくっとるということや。どうとでも叩いてくれ、どう叩かれて後ろ指差されてもこの関係は揺らがん、ちいっとも悲しないってな。身分も要らん、地位も肩書も要らんから、奪いたいものがあったら奪ってくれってな。つまりどう痛めつけられても、この人間関係に手をつけられんかぎり屁でもないんやわ。後ろ指差すだけで、刃物で刺すわけやないから命は助かっとる。命取りたなるのは、去年の暴漢みたいに少し狂っとるやつらだけや。それは松葉さんがしっかり防いでくれとる。どう突っついても法律は犯しとらんし、かと言って自分の口でわざわざえらそうに宣伝することもせん。それで、噂も人目も後ろ指も気にならんとなったら、騒ぎ立てる甲斐がないわな」
女将が、
「それでもうちらは神無月さんやあんたがたを力を尽くして守ります。あんたがたのすることは一つや。うるさいハエが寄ってくるような隙を見せんこと。ほな、お休み」
「お休みなさい」
主人夫婦が離れに退がった。千佳子が、
「私、ケツまくってるかしら」
カズちゃんが、
「まくってるわよ。キョウちゃんの名声を笠に着て、キョウちゃんの恋人だなんてだれにも漏らしてないでしょう? 隙を見せてないということよ」
ソテツが、
「住みこみやかよいの賄いさんも、神無月さんをこっそり慕ってる人だけが残りました。私たちのことも温かい目で見てくれてます。現役のトルコさんは一人もいなくなりましたけど、案外ああいう人たちが私たちのような関係に目くじらを立てているのかもしれませんね」
「愛されたことがないからよ。でもいっとき軽蔑したり不潔感を覚えたりしても、キョウちゃんが暴君のように一方的な欲望から漁色の行動をするんじゃなくて、愛に愛をもって応えてる人だと感じて、キョウちゃんのやさしさと清潔な心を理解したみたいね。噂を立てて傷つけようとしなかったもの。相手が二人や三人なら、よくある浮気話となるんでしょうけど、何十人となると、男はある種の羨望から、女は教えこまれた貞操感から神経を乱されるのね。静かに暮らしたいなら、とにかく大切な秘密として外に漏らさないことよ。いつ何時いなくなってもおかしくない人が、確実にいなくなるわよ。あら、もう十一時半になっちゃった。そろそろみんな寝なさい」
イネが、
「コーヒーいれるすけ。十二時までいいべ。神無月さんと話コするのひさしぶりだもの」
千鶴が、
「ほうよ、もう少しお話しよまい」
「ぼくもそのほうがバタンキューで眠れそうだ。ビールちょうだい」
「うちらも」
素子が言う。ビール瓶が十本ほど運ばれてくる。イネが、
「昼間に試合してきたすけ、クタクタだおん。かにしてけへ。……ふとつだげ訊ぎたがったのし。五百野読んで、神無月さんがどったに強いふとだべて思って。あったに悲し思いすたら、ふつうは、とっちゃもかっちゃも恨むべと思って。なしてそたらにきれいなこんころもちで生ぎられたんだべって思ってせ」
「怨んだよ。母も父も。ただ、ぼくは生まれつき拘りのない性質と言うか、あきらめの早いタチなんだよ。そのせいできれいな心持ちの人間に見えるのかもしれないね。ものはよく考えるけど、人の意外な行動のありようには苦情を申し立てない人間。でも、あきらめのいい人間は御しやすい。御されないように助けてくれる人が常に必要になる。ぼくが求めなくても、こいつは助けが必要だと判断する人がかならず手を差し伸べる。見ていられないからだよ。そう考えると、とても弱い人間ということになる。ぼくは強くない。いつも自分の弱さに幻滅してる。自分に対するこの幻滅は終生変わらない。だから、ぼくを愛してくれる人からだけでも幻滅されないようにがんばって生きてるんだ。そうやってがんばって生きることが、ぼくなりに定義した愛の形だ」
睦子が、
「自分を愛さない人には苦情を申し立てない、愛する人に全力で愛を捧げる……簡単には到達できない気持ちだと思います」
ヒデさんが、
「初めて出会ったときからそういう人だとわかってました。ほとんどの人が自分を愛さない人に不満を言って生きてますから。あきらめではなく……先天的な悲しみだと思います。白百合荘で葛西美代子さんとも話しました。郷さんの悲しい顔が私の根っこに住んでるって話したとき、彼女もまったく同じだと言ってました。そして北村席にきて、睦子さんたちもまったく同じ気持ちだとわかりました。和子さんたちもきっとそうだと思います」
カズちゃんが、
「ただキョウちゃんのぜんぶが死ぬほど好きというだけで、そんなに深刻に考えたことはないけど、悲しくさせたのは悲しくなく生れた私たち人間なんだから、その一人の私が責任をとらなくちゃというぼんやりとした気持ちはあるわね。キョウちゃんを長生きさせたいから。みんなもそういう気持ちでしょ? 悲しい顔も胸を締めつけるけど、笑った顔もからだぜんぶを晴々とさせてくれるわ。奇跡の赤ん坊だもの。不思議がらずに、ノホホンと放っておけばいいの。いくら理解したって、キョウちゃんにはなれないんだから。精いっぱい愛して、甘えて、愛してもらうこと、危なっかしいときは助けてあげること」
ソテツが、
「すっきりしたね! イネちゃん」
「うん、サッパリすた」
幣原がまぶたを指で拭いながら、
「奇跡の赤ちゃん……ピッタリですね。そろそろみなさんお休みになってください。あしたがつらくなりますよ」
千佳子が、
「寝ましょ。あしたはフイルム買わなくちゃ」
「バッティング練習から撮りまくりになるわね」
「そう、席のみんなも撮るし。たくさん買わなくちゃ。秀子さんと直ちゃんは、お父さんといっしょにネット裏。私たちは一塁ベンチの上。A指定席」
「菅野さんすごいわね。チケット取りの名人」
「ファインホースの行動力がすごいのよ。秀樹くんは学校ないんでしょ?」
「春休み。菅野さん一家はこれるわ。アイリスは?」
「午後から有給で臨時休業にしたわ。当然よ。アヤメは営業。優子ちゃんは早番だからこれるけど、百江さんは中番ね」
「あさってだけ早番にしてもらいました。幣原さんたち三人も夕方まで休みをとるそうです。お母さんとトモヨ奥さんと賄いさん何人かでお留守番」
ヒデさんが、
「さ、寝ます。あしたは午前中にみんなでサークル紹介にいってきますから」
メイ子が、
「映画研究会にするんですか?」
「はい。キッコさんは文芸サークル」
「理屈っぽいクラブやろうとは思うけど、やっぱりたくさん本を読まんとあかんから」
カズちゃんが、
「大学のサークル活動なんて、半年かんかくなんてのがザラよ。さあやろうって立ち上がって、揺らいでそして消えていくの。陽炎みたいなものね。そうなったときはガッカリしないことよ」
「はい。じゃお休みなさい」
「お休みなさい」
賄い三人が台所へ去り、名大生たちが二階へ上がった。私たちも玄関を出る。粉雪。優子とジャッキが門まで送ってくる。十二時をだいぶ回っている。優子が、
「おお寒い。あしたは積もるかしら」
百江が、
「この程度じゃ積もらないんじゃない。でももうすぐ零下になるわよ。朝方はマイナス二度くらいかなァ。早番がんばってね」
「うん」
「あした、プレゼントのセーター着て北村席にいくよ」
「はい、ぜひ」
みんなでジャッキの頭をなぜて道へ歩み出す。街灯に粉雪がつどってきらめく。
「バタンキューもさびしいから、深夜映画でも観ながらうつらうつらしよう。みんな寝ていいよ」
「うん、私たちは寝るわね。素ちゃん泊まってく?」
「きょうはビールが入ったで、もう限界やわ。ほんとにバタンキュー。お休みなさい」
「お休みなさい」
手を振って隘路の先の階段へ向かう。カズちゃんが、
「キョウちゃん、今夜だいじょうぶ?」
「何が? ああ、あれ? だいじょうぶ」
「疲れマラというのがあるわよ。二、三日に一回しないと精子が溜まって、ときところ選ばずになっちゃうから。私は素ちゃんと同じできょうはグッタリなの」
メイ子が、
「私が添い寝しましょうか。少し危ないんですけど」
百江が、
「二人で添い寝しましょう。そのほうが安心です」
「そうしてもらえるとありがたいわ。お願いします」
勝手に決めてしまった。
居間に落ち着き、パジャマに着替え、テレビを点ける。カズちゃんがココアを三人分用意して寝室に退がる。
「ほんとにいいんだよ。二人、適当に寝て」
メイ子は返事だけして、新聞のテレビ欄を調べている。百江がチャンネルを回していく。釣り番組、昭和史・宗教弾圧、あとは映画、疾風鞍馬天狗、嵐寛寿郎か。洋画マンテーニャの名作。何じゃそれは。メイ子が番宣を読む。
「マンテーニャの名作はあと三十分残ってます。昭和二十三年、アメリカ、ジャック・バンハート監督、ルネッサンスの画家マンテーニャの名画盗難事件をめぐって人間の欲が絡み合う探偵映画」
「つまらなそう。鞍馬天狗にしよう」
「鞍馬天狗は始まったばかりです。昭和三十一年、監督並木鏡太郎、嵐寛寿郎、松島トモ子、北川町子、扇千景、大河内傳次郎」
ココアをすすりながら観る。田舎道を白馬で疾走するアラカン。疾走しているのは、狐や狸の嵯峨面をつけた大勢の賊に囲まれて斬り結んでいる侍(勤王の志士桂小五郎)を救うためで、馬上から拳銃を二発発射して賊を倒す。馬から飛び降りたあとは峰打ち。
「峰打ち? いま二人殺したよね」
なんとなく釈然としない。チンクシャの杉作が登場。素直ないい子。敵側に催眠術を使う坊主が出てくる。さらに面をかぶった佐幕集団が暗躍する。そこへ若い扇千景の恋模様が唐突に絡む。少し眠気がくる。同時に股間がふくらみはじめる。カズちゃんの警告したとおりだ。性欲はまったくない。着物姿に感興を覚えたわけでもない。メイ子がそっと手を当てる。百江が、あら、と言う。
「もう少し観てから」
扇千景の父親役は飛騨の田舎住まいの剣の名手。メイ子が、
「この宝塚映画が鞍馬天狗の最終作だそうです。これのあと嵐寛寿郎は新東宝に移りました」
「わかるな。伝統的な時代劇映画の迫力がない。鞍馬天狗に覇気がなくなってる。隠密剣士のようなテレビ画面を観てる感じだね」
「原作者の大佛次郎がこれまでの作品にクレームを入れて、別の脚本家を雇ったんだそうです」
「ふうん、原作者が映画人に茶々を入れちゃだめだよ。アラカンが、自分を支持する大衆に応えようという伸びのびした感じがなくなるんだ。もうやりたくないってアラカンが思ったのもムベなるかなだね」
百江が浴衣の寝巻に着替えて戻ってきた。メイ子の手が微妙に動く。暗殺隊一味に引きこまれた飛騨の剣豪大河内傳次郎と天狗が対決するエンディング近くになると、私のものははち切れそうになっていた。私はパジャマのズボンを下ろした。百江が浴衣の裾を開いて跨ってきた。それを見てメイ子が下着を脱いだ。
第二章 オープン戦ふたたび終了
第三章 サンフランシスコ・ジャイアンツその1に進む