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《井上陽水(1980) クレイジーラブ》
70年代からとつぜん時代が飛んで、80年代後半。自分にまだまだ聴く耳があると認識させた曲。夜の無人のガソリンスタンドの店外スピーカーから、最初の数秒で名曲とわかる歌が流れ出してきた。当時予備校講師だった私は、その日も何人かの学生たちに茶をおごったあと、一人の男子学生に見送られてビジネスホテルに帰る途中だった。
「××、この歌は何だ?」
「さあ」
「歌詞の一節を覚えておいて、レコード屋ですぐ手に入れてくれ」
「はい!」
二人、スピーカーの下にたたずんでしばらく耳を傾けていた。
「たぶん、クレイジーラブだと思いますけど、とにかくあした買ってきます」
私は彼に二千円渡した。
翌日××は、
「やっぱりクレイジーラブでした。山口百恵に贈った曲で、なんとかいうアルバムに収録されてるそうです。店頭では手に入りませんでした」
その数年後、私はたまたま有線からこの曲をカセットテープに録音することができた。シャウトをしないクリアな歌声、リズム、メロディ、ともにまさに私を育てたオールディーズ、50、60年代バラードの精髄と感じられた。まぎれもなく夜更けの机に寄り添う曲。陽水の名曲の最高峰に位置づけられるものだろうと確信している。