六十七

 池に向かってベンチに座る。いい天気だ。池の周囲の紅葉を見渡す。深紅と黄色と緑が空の青に溶ける。そのコントラストが池に映りこむ。雅子が林檎と柿を剥き、私たちに手渡す。どちらも歯応えがよく、甘い。
「硬くて甘い果物は最高だね。特に桃と柿」
「硬い桃はなかなかありませんから、今度見つけたら買っておきます」
 スワンボートが水面を過ぎる。父親が男の子を乗せている。青空に飛行機雲がかかっている。指差すと、女二人が見上げた。直人と散歩したときも飛行機雲を見上げた。空を愛でる者の頭上には雲が流れる。
 七井橋から狛江橋を渡り、遊歩道を歩いて真っ赤な弁才天へいく。石灯籠、狛犬、手水舎を備えた、かなり立派な寺社建築物だ。銭洗い場や、絵馬掛け、脇僧坊などを見物しながら周囲を一周し、最後に本堂前で鈴を鳴らして賽銭投入。最近ではこれが何の拘りもなくできるようになった。かなり人がたむろしているが、二人の年増の美しさが群を抜いている。池を眺めるベンチに坐って、水源の噴水を見やる。トシさんが、
「目が洗われるってこのことね」
「ほんとに」
 裏の橋を渡って園内に戻る。裏階段を登り、遊歩道を歩いて八丁通りに入る。一筋目を曲がって一軒目。ひときわ庭の大きい平屋。帰り着くと、ドレスを着た法子が庭に出て蒲団を叩いていた。私を見て、
「へーい、三冠王!」
「よ! 女帝」
 予定を一つ取り戻した。雅子が、
「法子さん、私やりますから、お茶でも飲んでて」
「うん、もう終わった。部屋に入れといて」
 二人で縁側から八畳の寝室に運び入れる。私は、
「きょうは、これっきり?」
「うん。夜はこられない。神無月くん、あした早いんでしょう?」
「九時過ぎのひかり。名古屋で少しのんびりして、師走は年末までスケジュールがビッシリ。法子も、いよいよあと一カ月だね。聞いたよ、名古屋のマンション買ったんだって?」
「買っちゃった。九百万。キャッシュで二百万引き。一室は神無月くんの部屋として整えとくからね」
 トシさんが、
「四LDKでそれはお買い得ですね。都心では二LDKで二千万しますから」
「何と言っても名古屋の熱田区よ。都心でないから少し廉め」
 雅子が、
「さびしくなるわ」
「おたがいね。でも、神無月くんがしょっちゅう遠征で出てくるし、それほどさびしくならないわよ。河野さんもいるし」
 雅子がキッチンテーブルにお茶の用意をする。私は、
「どうしたの、ドレスなんか着ちゃって」
「八時出勤にしたから、ここから直接いこうと思って」
「六時ぐらいに夕飯にすればいいですね」
「そうね、七時過ぎに出ればいいから。五時から三人で支度しましょう。具材は買ってある?」
「たっぷり。じゃ私、長イモの皮を剥いて、アク抜きをして、お料理の下準備をしておきますね」
 トシさんと二人でシンクに立つ。法子は、
「私、お風呂借りちゃう。きのう入ってないの。追い焚きできる?」
「はい、してください。からだを洗っているうちに、三分ほどで熱くなります」
「私がお風呂から出たら、さっそくね」
 トシさんが、
「はい、そちらも準備万端です」
「私、きょう危ないの。それもお願いね」
 居間でドレスを脱ぐ。雅子が、
「私たちでお引き受けします」
 法子は裸で廊下を歩いていく。振り向いて、
「神無月くんもきて。二人で入る今年最後のお風呂よ」
         †
 湯船でひしと抱き合う。
「とうとう、押しも押されもしない日本一になったわね。すごくうれしい」
「喜んでくれてほんとにありがとう。でもぼくは日本一でも、世界一でもないよ」
「じゃ何?」
「プロ球界優秀賞。プロ野球の一流バッターとして世間に知られただけ。それだけのことだよ。見世物のプロ野球選手は、〈複雑な〉政治機構、〈複雑な〉社会組織の外にいる単細胞の道化師(ピエロ)だ。東大学長の態度でそれが瞭然とした。そして〈複雑な〉人間であり得ない自分の矮小さに幸福を感じて涙が流れたんだ」
「複雑ってどういうこと?」
「何か大きくて深い背景がありそうで、ぼくのようなふつうの頭で考えたんではわかりにくいってこと。人は、大きくて、複雑なものを求める。芸術の世界でさえそうだ。ぼくは求めない。関心がない。それがぼくの生来の矮小さだ。ぼくは、小さく、単純な人間を愛する。ぼくは本来、どんな分野でも成功し得なかった男だ。なぜなら、どの分野もかならず大きな複雑さを蔵しているからね。それがいやで逃げる。複雑なものを見つけるとかならず背を向ける」
「簡単にわかる頭のよさがあるのに」
「わかっておもしろくないものは、わかりたくない。あのね、複雑の要素も好んで採り入れないかぎり、人間界の成功者となり得ないんだ。つまりこのぼくが、人間社会という進歩と向上を目指す〈大きく複雑な〉集団で成功するはずがないということだよ。プロ野球界というシンプルな集団で成功しただけだ。しかもその集団の中のバッターとして成功しただけだ。これだけでも、ぼくみたいな矮小な人間には人生最大の僥倖(マグレ)だよ。僥倖はすべからく拡散させて、小さく単純な世界で睦み合って暮らしている人びとに分け与えなくちゃいけない。大好きな彼らを慰める希望として役立て、できるならぼくの僥倖を武勇伝として喜び、くさくさする日常を忘れてもらうために役立てなくちゃいけない。法子のようにそうやって喜んでくれれば、役立った証拠になる。ぼくは満足して生きられる」
「また自分を徹底してこき下ろしてる」
 私は法子のやさしい笑顔を見つめて、しばらく黙りこんだ。
「神無月くん、どうしたの?」
「法子は抱いてあげる回数のいちばん少ない女だとおもってね。いつも気にかかってるんだ」
「くだらないこと考えないで。だれも順番待ちをしてるつもりなんかないんだから。神無月くんには、たまたまその一日があるだけ。私たちも同じよ。でも、うれしいわ。溜まってたの。お店に出るまでだいぶ時間があるわ。よしよし」
 明るく言う。
「溜まってたって?」
「純粋に生理的なものよ。これでも二十歳の若いからだだもの。神無月くんのことは、想ってるだけで胸がいっぱいになるから、こういうチャンスでもないと、自分に本気の性欲があったことに気づかないの」
「ようし、きつい一発をしよう」
「お風呂ではだめよ。もったいない」
 言われたとおり、私も勃起しかかったものをよその気分で紛らせる。
「店の様子はどう?」
 法子は得意気に笑い、
「二人、責任者を決めたわ。ほら、出っ歯の眼鏡ちゃんが酔族館にきたとき、テーブルについた年配の女の人がいたでしょう」
「ああ、憶えてる。上品な感じの。たしか、サブママのミドリさんじゃなかったかな」
「さすが、いい記憶力。その人を総統括にして、ホステスさんの指導からスカウトまでまかせたの。もう一人はミハルちゃん」
「ローリングストーンズの?」
「うん、大変身しちゃって、とっても〈できる〉子だってわかったの。彼女を副統括に据えたわ。主にホステスさんの苦情の相談役をしてもらう。気配りのいい子だし、根が明るいから頼りになるわ。この二人は名古屋についてくることになったのよ」
「千夏は切ったんだったね」
「うん」
「それから、ほら、よしのりが温泉から連れてきた、何て言ったっけ」
「敦子さんね。けっこう働きがよくて期待してたんだけど、結局よしのりさんを見かぎって、またふらりと旅に出ちゃった」
 よしのりに思いを馳せる気分ではなかった。
「名古屋の店はいまより大きいものになるから、お金の出し納れがたいへんだろうね」
「お金をいじらせて信用できるのは男の人。一日分の売り上げを夜間金庫に納めてもらったり、ツケを徴収したり、ホステスさんに給料を配ったりする役は男でないとだめ。でもだいじょうぶよ。北村席のご主人から連絡があって、松葉さんの中堅幹部の能勢さんという人にボーイ長をやってもらうことになった。給料は従業員の二割増し。それで松葉会へのミカジメはなし。お子さんが二人いらっしゃる家庭持ちだから、とってもまじめで、義理に外れたことはしないってわかる。お金を銀行から引き出すのはもちろん私よ。いままではお金の出し入れはほとんど古沢チーフがしてたの」
「決まったね」
「おかあさんにときどき逢ってくれてる? 一度、抱いてもらったって電話あったけど」
「その一度だけ。あんまりいけないんだ」
「そうよね。忙しいからだだもの。……私、幸せすぎ」
「山口のことは知ってるね」
「もちろん! おトキさんもいっしょに水族館にきてもらって、お祝いしたわ。何曲かギターを弾いてくれて、お客さん大喜びだった」
 蒲団の上にすでに二つの裸体が横たわっていた。私たちも横たわる。二枚重ねた掛蒲団がふかふかしている。
「わあ、気持ちいい。蒲団が新しくなったわ」
 雅子が、
「古くなってたので、敷布団だけ打ち直してもらったんです」
「こんなふうになるのね。私も名古屋にいったらしてもらおうっと。いくらぐらい?」
「一枚三千円前後です」
 セックスが違和感なく生活の一部に入りこんでくる快適な会話だ。
「いろんな女の汗が滲(し)みてたものね。ぼくもだけど」
 法子が、
「ふふふ、汗というよりは……かな」
 トシさんが、
「ま、露骨。キョウちゃんは、どうして毛布を使わないの。いつも敷布団の上にすぐ掛布団でしょう」
「毛布はチクチクするし、足のあたりで皺の寄る感じが苦手だ。掛蒲団や敷布団の覆い布のひんやりした肌触りが好きなんだ」
「汗で汚れるわよ」
「しょっちゅう干せばいい。綿が古くなったら、こんなふうに打ち直しだ」
 法子が抱きつく。
「すぐして。お風呂に入っているうちにもうぐっしょり」
 法子は私のものを握り締める。
「これ、これ、伸びろ、伸びろ」
 雅子とトシさんが、私に取りつき、キスをしたり耳を咬んだりする。三人の素朴な愛撫に発奮して、私はたちまち可能になる。法子は四つん這いの尻を向けた。
「入れて。それだけで一度イクから。動かしちゃだめよ。抜いたらすぐ、オマメちゃんをよろしくね」
 グイと突き入れる。ウーンと一声うめいて法子は飛び離れ、蒲団に腹這いになる。尻を上下させながら、気持ちよさそうに気をやっている。表に返して、股間に吸いつく。新しい気をやらせ終えると、待っていた雅子へ、トシさんへと突き入れる。それからはいつもと同じ反応が褥の上に展がる。この営みから関心が遠ざかることはあっても、嫌悪することはない。私は愛されているし、私も愛を感じているから。雅子が、
「そろそろよ、郷さん、大きくなった、あ、ああ、すごく強くイク、イクイクイク、イクウ!」
 抽送をつづけていると、
「限界、限界、郷さん抜いて! 菊田さんお願い!」
 トシさんは、私のふくらみ切ったものを受け入れ、射精と律動を吸収しながら高らかな声を上げた。


         六十八

 三人の女が三人とも、五百野のスクラップをしている話をする。そして褒めちぎる。雅子が、
「才能って、どこまでかぎりないんでしょうね。読んでいて怖くなります」
 男も女も快楽の行為のあとは、本能的な照れからか、生理的な反動からか、精神の襞を開陳したくなる。人間はこのバランスを保って、きっと何千年、何万年も生きてきたのにちがいない。
「みんなの感動に水を差すようで悪いんだけど、ぼくに才能なんかないよ」
 法子が、
「ほら、始まった。褒めるとかならず、人間じゃないないような最高の言葉が返ってくるわよ」
 トシさんが、
「慣れてます。誠実ですてきな言葉。いつまでも生きて、聞いていたい言葉。キョウちゃん、好きなだけしゃべって」
「うん、素直に褒められていることも多いんだけど、ついね……恥ずかしくなるんだ。文章芸術に関して言うとね、思想を作りあげる言語宇宙を持ってる天才たちは確実に存在するんだ。ただ、少ないながらこれまでいろいろ本を読んできて、他人の芸術の才能というものに特殊性を感じなくなってきた。鈍才もいれば秀才もいるというふつうの現象だと思うようになった」
 雅子が、
「芸術って、数学のような問題を解くんじゃなくて、何もないところから作り上げるんでしょう? それに鈍才とか秀才がいるんですか?」
「そう。ものをこしらえるのは生活の糧のためじゃない。道楽だ。砂場で山を作って喜ぶのと大同小異。それでも、じょうず、へたはある。十五、六のころに、あれほど〈じょうずな〉芸術に感銘を受けたのは、ぼくが無邪気だったせいだ。もう少しモノを深く考えられたら、独創的だと思えた彼らの表現がじつは、先人の〈工夫の利いた〉受け売りだったことや、いろいろな先人の作風や技術を記憶して応用する卓越した能力のなせる業だったことがわかったと思う。その先人からして、独創などというものはなく、さらにその先人の応用にすぎないということがわかったと思う。……そこまでは、言語宇宙をこしらえる工夫の話で、それのうまい天才は確実にいるし、歴史にも天才として刻まれている。ぼくが言いたいのは、その先なんだ。……ぼくはあるときから、訥々と愛情を刻むわかりやすい文章に美しさと価値を認めるようになった。そして、深く感動するようになった。愛情の表現に工夫を利かせるわけにはいかないから、天才の言語宇宙をもってしてもいかんともしがたい。その人が持って生まれた愛情の〈圧力〉のようなものが必要になる。そういう文章は多くないし、そういう文章を書く人も天才として銘記されない。いくつか挙げれば、ヴィーダのフランダースの犬、エリ・ヴィーゼルの夜、セルバンテスのドン・キホーテといったものかな。日本人はおそらく知性に対する劣等感から、わかりやすい文章を嫌うので、圧力のある愛情をこめた作品は永遠に作り出せない」
 トシさんが、
「日本人としてさびしいことですね」
「そうだね。だから日本にはそういう作品は、知性を捨てた作家にしか見当たらない」
 雅子が、
「太宰治ですね」
「うん。中でも、眉山、黄金風景ぐらいかな。……自分を受け入れ、愛してくれる人たちに愛情を返せるかどうか、その圧力がほんとうの独創だ。―スポーツも快楽の追究もまったく同じ。じょうずへたじゃないんだ。どんなに手のこんだ道楽も、愛がなければ密室の中の一人よがりだ。芸術の価値は〈じょうずに〉作りあげる才能じゃなく、愛をこめてものを作りあげる情熱にある」
 法子が、
「きょうもずっと神無月くんの言葉が聞けてる。もっと聞きたい」
「ぼくは才能のない作文書きだけど、先人の模倣をしないで自分だけの愛情を表現する情熱はある。そしてそれを涸らさない自信がある」
 トシさんが、
「キョウちゃんの作品には愛があるわ」
 雅子が、
「わかりやすいし、とても感動します。愛情の圧力……スポーツも快楽の追究もまったく同じというのも、とてもよくわかります」
 私は雅子の乳房をつかみながら、
「子供を産むことを計画しないセックスのことを、いきづまった近代社会から生じた病的な現象だと言う人たちがいるんだ。病的だけれど、そうするよりほかに道はない、病的な要求がむしろ当然の要求になってしまっているんだ、ってね」
「よくわかりません」
「へたくそで、わかりにくい説明だ。どうしてそうするよりほかに道がないのか証明できてない。いきづまった近代社会なんていう常套文句の意味もサッパリわからない。そんなことを言う人たちは、セックスもそれからもたらされる快感も、道徳的な儀式だと思っているんだろう。快感に古代も近代もない。まさか、セックスは子供を産むための道徳的な儀式だと意識していた時代があったとは思えない。性交というのは、男女が性器を摩擦し合って、純粋に生理的な快楽を得るための、思考の欠けらもない行為だからね。たしかに肉体が快感のいただきで生理上のメカニズムに導かれて吐き出す液体が、次世代の生命体として結実することは知識としてある。でもそれは、子孫繁栄のための〈計画的〉な快感誘導の結果じゃなくて、愛し合いながら性欲に誘導されて交わったせいでからだの無意識な生理がもたらした結果だ。愛情という意識と快感という無意識を同時に行えることが人間の神秘なんであって、その神秘に古代も近代もあるわけがない。……快感は正常な感覚じゃないから、どこか淫靡なところがある。その淫靡さを世間道徳で認可してあげていた風潮が、許可なく行なわれる風潮に変わってきた。認可なくするとはなんとだらしない、と言いたいだけだろう。肉体の快楽にばかりこだわって、快楽を越えた愛という神秘を頭から忘れている粗悪でひんやりとした社会通念礼讃だ。こういう人間に愛はない。交接欲だけがある。いちばんスケベな連中だね」
 法子が、
「認可って、結婚制度のことね」
「うん。社会の取り決めしか彼らの頭にない。大きくて複雑な機構が取り決めたものだからね。彼らの求めているのは、公の認可だけだ。ぼくたちは愛のある、認可されないセックスをするべきだ。法子、もう一度するよ」
「はい!」
「雅子とトシさんも参加して」
「お願いします!」
         †
 夕食は、長イモの豚肉巻きがメイン。一見チクワに見える。噛むと軟らかい。
「柚胡椒で炒めたんですよ。ほっくりとした食感でしょう?」
 法子が、
「ほんと、辛味の効いた大人の味。お店でも出してみようかしら」
「お酒のつまみにピッタリですよ。アク抜きも酢を一、二滴入れた水に十分ぐらい浸せばいいだけで簡単です」
 ナスとピーマンのバター醤油炒め。これもうまい。豆腐とカブと油揚げの煮物。絶品。
「おいしすぎて、自信なくなっちゃう。エヘ、もともと自信なんかなかったんだった。あと一カ月、ときどき習いにくるわ」
「料理なんかコックさんにまかせておけばいいんですよ。火曜と水曜は、ここで菊田さんとのんびりしてますから、遠慮なくいらっしゃってください。いっしょにお食事しましょう」
「そうさせてもらいます。じゃ、私お店に出ます。神無月くん、来年会いましょ。気を使わないで暮らしてね。神無月くんが好きな人は、みんな神無月くんを愛してるんだから」
 八町通りまで三人で法子を送って出た。その足でタクシーを拾い、荻窪のトシさんの新築店舗を見にいった。『菊田不動産』の初々しい看板。
「看板も引き戸もシックだね。派手でなくていい感じだ。これならお客さんが入りやすい」
 店内が三倍ほどの大きさになって、照明が効き、事務調度も書棚もカウンターも接客テーブルもしっかり整っていた。奥は居間になっていて、ここにもテーブルや書棚が整い、雅子の勉強部屋も兼ねているということだった。
「受験はお祭だから、楽しく参加してね」
「はい。勉強が楽しいのでだいじょうぶです」
 トシさんは少しばかりの書籍とノートを革のケースに入れて持った。
「音楽部屋で少し二人で勉強するから、居間のお蒲団に入ってテレビを観ててね。そのあとで……」
「うん。今年最後のね」
 同じタクシーで御殿山に戻る。夜の緑を昼よりも美しく感じる。背景に闇を抱えているので緑が主役になるからだ。十年―私を美しいと思った人たちも、きっと私の背後に同じ闇を感じたのだろう。
 テレビ朝日で、早く終わったプロレス番組の余り時間を使って、大場政夫というフライ級天才ボクサーのここまでの道のりを特集していた。私と同い年の男だった。康男に似た(光夫さんか?)美青年。じっくり観ることにした。
 中学を出た年の六月に帝拳ジムに入門し、翌年十一月四回戦ボーイとしてプロデビュー。一回KOでデビュー勝ちを飾った。それからKO、KO、TKO、判定勝ち、判定勝ちと勝ち進み六連勝、その翌年KO、判定勝ち、六月判定負け、KO、判定勝ち、TKO、十月新人王戦予選で引き分け。ここまでの経緯を見ると、十一勝一敗一分七KO、ビギナーズラックで終わらなかった男というところだ。そこから翌年の八月まで六回戦ボーイ、八回戦ボーイと昇りながら七連勝三KO、九月に初の十回戦に挑戦したが花形進に判定負け。これで二敗目。そこから判定勝ち二連勝。今年三月日本フライ級王者スピーディ早瀬にノンタイトル戦ながら判定勝ち、それから八月の東洋フライ級王者中村剛にノンタイトル戦ながら判定勝ちを含んで判定勝ち三連勝。フィルムはここまでだった。私の目にはまだ七分咲きにしか見えなった。判定勝ちが多すぎる。ただ、ときどき突き刺すようなパンチが出るが、あれがうまく当たるようになれば、遠からずチャンピオンになれるだろう。来年は世界に挑戦するという。追跡して観る気はない。カシアス・クレイや藤猛とあまりにも切れ味がちがいすぎる。日本テレビに切り替える。『きょうの出来事』を観る。ヘルシンキで米ソ会談、第一次戦略兵器制限交渉。佐藤首相訪米、沖縄の施政権を昭和四十七年までに返還することが決定。米ソが核拡散防止条約を批准。いつものとおりチンプンカンプン。11PMが始まったころ、ようやくトシさんと雅子が蒲団にもぐりこんできた。二人ともすがすがしい石鹸のにおいがしていた。そのにおいを嗅いだだけで、急に眠くなってきた。両脇で呼吸している二つの胸に掌を置く。テレビの画面に目を戻した。三木鮎郎とジューン・アダムスが映っている。私は行為に移ろうとしない。二人にも待っている気配がない。
 過去は夢のようだ。思い出が人間を作る。言わば人間の鋳型だ。残像と感情の寄せ集めが人間を雄弁に語る。時が経つとわかる、人間を作るのは思い出だと。それにしてもいいにおいだ。思い出の中にないにおい……。現在(いま)のにおいを愛する自分に気づく。愛する者のにおいに気づく苦しみが絆を深くする。ともにいまを歩む愛し合う者。思い出が少しずつ薄れていく。混乱する。あれは私の記憶? それとも愛する者の? どこで手を離す? 手を離して、むかしの夢に戻りたい。たぶん雅子がテレビを消したようだ。目をつぶっているのでわからない。二人の寝息が聞こえてきた。私もおのずと眠りについた。
         †
 十一月二十七日木曜日。晴。寒い朝。六時に起き、三人で新しく入れた湯に浸かったあと、昨夜のごちそうの残り物で朝食をしたためた。トシさんが、
「きのうはすぐ眠ってしまってごめんなさい。お乳に手を置かれたときはチョッと期待したんですけど」
「私も」
「風呂上りのとてもいいにおいだったから、思わず手を置いちゃった。眠ってしまったのはぼくだよ。こちらこそ、ごめん」
 雅子が、
「私もなんだか安心して、急に眠くなって、テレビを消すのがやっとでした。三時ぐらいに目が覚めて神無月さんを見たら、スースー寝てました。授賞式の疲れが溜まってたんですね。私たちも神無月さんに釣られて、すっかりダウンしちゃいました」
「じゃ、もう、気力、体力、回復だね」
 トシさんが、
「もちろん。出発まで二時間。いくらでもできます。キョウちゃんががんばれるかぎり」
「私も、ぜったい気を失わないでがんばります」
「―愛してる」
「愛してます!」
 雅子はきのうの蒲団に上下とももう一枚重ねて敷く。三人、裸になって蒲団にもぐりこみ、キスをしたり、からだをさすったり、握ったり指を入れたりする。途中で二人、軽く気をやった。蒲団の中でトシさんがもぞもぞ動き、低い姿勢になって尻を向け、平泳ぎのように脚を大き広げた。その形をイメージしただけで屹立した。私も低い姿勢で覆いかぶさり、挿入する。すぐにうねりがやってきて、トシさんは蒲団に両肘を突いて尻を持ち上げた。
「ああ、キョウちゃん、気持ちいい! イク!」
 つづけて四度、五度と達する。独特の前後運動が繰り返され、軟らかいヤスリが陰茎の間断なく腹をこする。亀頭が一気にふくらむのがわかる。
「あ、イク、キョウちゃん、ありがとう、もう無理、福田さんよろしく、あ、あ、イクイクイク、イクウ!」
 トシさんの背中を押して離れ、仰向けで待っている雅子に挿し入れて、唇を吸いながら激しく抽送する。たちまち猛烈な収縮が起きて、腹が弾む。合わせて吐き出す。弾む。律動する。弾む。雅子のふくよかな顔が横に倒れた。


         六十九

 雅子はすぐに回復し、
「まだです、まだできます」
 陰阜を曖昧にさすりながら、五十三歳と六十三歳の女二人にキスをしていく。自分が回復するまでのあいだゆっくり指を使う。交互に小陰唇やクリトリスをいじったり、膣に指を挿し入れたりする。トシさんが、
「あ、私、だめ、イッちゃう、キョウちゃん、イク!」
 雅子が、
「私も……うう、気持ちいい!」
 私の腕を両手で握って痙攣する。その瞬間私も回復した。それを横目に捉えた雅子は、この一年で初めて積極さを見せ、私の腰の上に跨ってしゃがみこんだ。手を握り合う。
「ああ、興奮する、愛してます、愛してます、イク、イクイク!」
 小便をする格好で途切れなく達しつづける。ついに倒れこんできたきたからだを抱き締めたとたん、私に気配がきた。雅子はグッとうめいて、連続のアクメを回復させる。
「好き好き好き好き、イクイクイクイク、好きィィィ!」
 尻を抱えこみ、心ゆくまで痙攣させる。陰毛と下腹が愛液で水浸しになった。濃厚な口づけを交わす。泣いている。女の愛の神秘だ。トシさんが起き上がって尻を向けた。雅子から離れて、トシさんに挿入する。激しくピストンする。
「すごい! キョウちゃん好き、あああ、イックウ!」
 彼女の腹に手を回して、開いた花びらに指を当てる。
「ああ、キョウちゃん、愛してます、がまんがまん、もう少し、あ、だめ、イキます、あああ、イクイク、イク!」
 懸命にヤスリに押し当てて射精を引き寄せる。
「うう、気持ちいい! あああ、イッちゃった! ううう、またイク、ああ、キョウちゃん大好き、あ、イク! ううん、イク! もうだめ、もうイケない、ク、イク!」
 そこまで近づいた。引き抜いて、雅子に深々と入れる。雅子はギュッと膣を引き締め、
「神無月さん、愛してますウウ!」
「雅子、イクよ」
「くださあい!」
 吐き出す。
「好き! イグ、クッウー!」
 愛し合う者に工夫など要らない。触れ合うだけだ。それだけでたがいに高潮を迎え、愛情に満ちあふれる。真から愛し合う者は、肉体の快楽を人生の高位に置けない者たちとはがんらい精神の構造がちがうのだ。断続して定期的に肉欲だけが湧いてくる者たちとはまったくちがう生きものなのだ。真から愛し合う者たちは、いつ訪ね合い、いつ行為を始めてもかまわない。交わるまでの間隔は、数日でも、十年でもかまわない。その隙間にかならずやさしい言葉があるから。
 愛する者といると時間の流れがちがう。ずっと長い一日で、日付の感覚がなくなる。気づくと一週間が過ぎていたりする。とつぜんの得体の知れない解放感がきた。雅子から離れ、二つのからだのあいだに横たわり、晴ればれとした気分で二つの腹を撫ぜる。女二人が私の胸をさすってくる。
「ありがとうございました」
「ほんとに、ありがとうございます」
 私は二人にキスをし、
「お礼なんかいらない。正直さと勇気の賜物だよ。人間の美徳の中で最高のものだ」
 トシさんが、
「私たちにそんなものがありますか?」
「そのかたまりだよ」
 雅子が、
「今度いらっしゃるのは、三月ですね」
「そう。さびしがらないで待っててね」
「はい」
 トシさんが、
「七十、八十になっても足腰がナマらないように、一生懸命がんばります。神無月さんのために」
 二人がすぐには動き出せそうもないので、私は蒲団を剥いで、シャワーを浴びにいった。ものを思いながら長いシャワーになった。
 こんな二日間で彼女たちに幸福はもたらされたのだろうか。こうする以外に私はどう生きればよかった? わからない。わからないということは、考えるのをサボっているということだ。私は何を求めている? 何も求めていない。なぜ? 自分のすることのすべてに意味がないと思えるからだ。私が愛していることなどと関係なく、だれもが私と同じように、自分は救われる価値がないと思っているかもしれないし、過去の経験から他人に愛されるのを恐れ、救いを拒んでいるかもしれないとしばしば感じるからだ。
 からだを拭いて居間へ戻ると、二人は身支度をすませていた。雅子はいとしそうに私に下着を穿かせた。私はズボンを穿き、ワイシャツを着る。トシさんはブレザーをはおらせた。二人は自然に淡々とやさしく振舞った。
 人は信じようとしないが、私は問題児だった。おそらく乳飲み子のころから。しかし、私を愛する人びとが私に可能性を見出した。私を……見つめようとしてくれた。たとえ無意味でも、やってみろ、と言ってくれた。だからいま私はここにいる。たとえすべてがほんとうに無意味でも、今度は私が見ようとする番だ。彼らの気持ちを推し量り、彼らに覚える私の感情を表現し、彼らの希望に応えるように行動し、彼らとともに暮らす番だ。幸せな結末は約束できない。しかし寄り添い、会話をし、触れ合うことで、彼らをそして自分を理解し、たがいに進む先がわかるかもしれない。トシさんが、
「……かならずこうやって訪ねてきてくれる。信じられない」
「今度は間が空くよ」
「三年?」
「三カ月」
「三年でも五年でもいいの。テレビや新聞で毎日逢えるし、贅沢は言いません」
「でも、ときどき贅沢させてくださいね」
 と雅子が言った。
 八時二十分。雅子とトシさんにキスをして、抱擁する。三人で御殿山の家を出て木立の道をビルの建ち並ぶほうへ歩く。雅子が、
「もっと話の種を蓄えておきますね」
「こんなものだよ、人間の生活なんて。話の種は仕事と家庭のことだけ。だから新聞を読んでテレビを観るんだね。人間がいちばんやらないことは、思い出を話すことと、褒め合うことだ。だからいつまでもその二つを種にしてればいい。何の準備も要らない」
 うれしそうに二人は両側から私の腕を取った。トシさんが、
「あとは自然と湧いてくる経験談ね」
「そう。きのうきょうのこと」
 吉祥寺駅の改札で手を振り合う。もう二度と会えないかもしれないと思うのは女々しくて恥ずかしいことだ。しかし、そう思うことは、別れるときにたった一つの重要なことだろう。会っているときに、憎むのも恐れるのも簡単だ。別れるときに愛を感じるのがいちばん難しい。
 万感の思いをこめて手を振る。これから私たちはこの世で生き残れるだろうか? 人生はどの一瞬もいきのこるためにあるに決まっている。いつかはよくなると言われる世の中に期待してはならない。命懸けで助け合うしか生き残る方法はないのだ。そうやって何があっても生きつづけ、生き抜く。最悪の日々にも、喜びが待ち構えている。予想を超えた感動的な人間や、聴いたことのない音楽や、見たことのない景色がかならず幸福を運んでくる。最悪の日々でさえすばらしい人事に取り囲まれているのだ。東京駅に出、九時三十三分の名古屋行ひかりに乗った。
 カズちゃんがすべての始まりだ。きょうも始まりの場所へ帰る。
         †
 昼少し前に北村席に帰り着いてすぐ、主人夫婦と菅野とトモヨさんと賄いたちに挨拶を終えると、アヤメから戻った早番組の女たちのいる座敷の縁側にあぐらをかいて、グローブとスパイクにグリースを塗りはじめた。そうしたくなった。あぐらをかいた脚もムズムズしている。数日走っていない。レフトポールからライトポールまでの百二十メートルの芝生が目に浮かぶ。カズちゃんたちアイリス組は昼めしを食いにこないので、夕食まで姿を現さない。アヤメの早番組のキッコや午後出のトルコの女たちが私の周囲に集まる。千佳子、睦子、優子もいる。彼女たちが口々に言う。
「すごいね、神無月さんは。―おめでとう」
「ありがとう」
「賞を総なめだってね」
「うん、ありがとう」
「丁寧に磨くのねえ」
「商売道具だからね」
 私はもう、グローブの寝押しに執心するような、純朴で表層的な情熱を持たない。それなのに、野球に注ぐ情熱はむかしに比べものにならないほど深い。女たちについても同じだ。むかしほどの気遣いをもっては眺めない。彼女たちのすごしてきた過去のどの一分一秒もひどく知りたいことではなくなったので、一律に無関心の中に葬る。それなのに、彼女たちに注ぐ想いは、むかしに比べものにならないほど深い。
 四年前の飛島寮の勉強部屋の雰囲気を思い出す。書店の棚から選んで買った参考書類が机上の小さな本立てに移されて収まり、十五ワットの蛍光灯スタンドには木谷千佳子がくれた手編みのスタンド敷きが敷いてある。目に親しんだ青と白の市松模様。その机にいる運命を不思議に感じ、しみじみとした気持ちになった。あの表層的な〈青春〉の感覚はどこかへいってしまった。それなのにいまは、机に対する想いがきわめて深い。主人が、
「神無月さん、菅ちゃんときっちり空いている日にスケジュールとったんやけど、十二月二十九日の月曜日、太閤椿神無月選手後援会の忘年会にちょっと顔を出してもらえませんか。五分でええです」
 主人が声をかける。
「わかりました。集会場所はどこですか」
「ここです。町民会館に集まるより、ここのほうが神無月さんには便利やから」
 菅野が、
「ただ、上座にいて、ビールをつがれるだけです。にこにこして、訊かれたことに適当に受け答えをしてればいいんですよ」
「後援会って、どういうことをするんですか」
「文字通り応援の広報活動、激励会の開催が主なものですが、少年野球教室の開催、庭の手入れ、水周りの点検、家の修改築、遠征などの諸経費援助といったこともやります」
「そういうことはぜんぶ、北村席のかたたちと、ドラゴンズ球団と、ぼくを支援する女性たちと、ぼく自身の力でできます。義捐の類はすべて要りません」
 主人が、
「それでは会の運営の建て前がなくなります。甘えてください」
「北村席のお父さんは、ぼくの愛する女たちの家父長的な存在なので、これまで大きな義捐をいただいてきました。ありがたくちょうだいしたものなので、お返しするつもりもありません。しかし……」
「とにかく、甘えてください。大したことをやってるつもりはありませんから」
「わかりました。でも会合は顔出しだけにしますよ。しかも、お父さんの顔を立てて年に一度、年末のみにします。お父さんの大事な人たちでしょうから。会合と言っても、ここで地元のみなさんとめしを食うだけにしてください。ぼくはビールをついで回ることはしませんよ」
 主人は激しくうなずき、
「わかりました。もともと後援会は〈持ちつ〉だけで、〈持たれつ〉を期待するものではないので安心してください。ワシが太閤椿商店会の会長をしとる関係で、ちょっと見栄を張ってみたんですわ。気兼ねのない単なるファンの集いということでよろしく」
 カンナを抱いていた女将が、
「後援会なんか作らんでええって私言ったんよ。神無月さんが面倒くさがってここを出ていってまうよって。そうなったらどうなるの、うちら、真っ暗やがね。和子も、この女の子たちも、みんな寝こむでって。丸く収まってよかったわ」
 トモヨさんが口に手を当てて目を見開いている。その様子が胸に刺さった。完璧であろうとするプレッシャーが愛よりも強力であっていいはずがない。せっかく設けてもらった会合には、すべて快く応じよう。ビールをつぐことぐらい何だと言うのだ。
「……せっかくのご好意を無にするような、杓子定規のことを言ってすみませんでした。北村席に関わる人たちと、ドラゴンズとは永遠に離れません。愛しているし、感謝しているからです。悪気などないことはじゅうぶんわかってますから。後援会の援助は喜んで受けます。ただ、その二者に直接関係しない団体の支援は遠慮したいので、菅野さん、その類の申込は断ってください。……それとも、タニマチを北村席関係のほかにも増やしたほうがいいと思いますか。もしそうならば考え直します」
 主人が、
「冗談じゃない。ワシも思いませんよ。北村席関係だけにタニマチを独占させてもらいますわ。とにかく二十九日は気安い飲み会にしましょう」
 菅野が
「軽く考えすぎてました。人に奉仕するだけの人が、むやみに人から奉仕されるなんてこと、受け入れるはずがありませんよ。軽率でした。どうか気を悪くしないで、北村席との交友関係だけはつづけてくれませんか」
「それはぼくの願いです。ぼくは愛してくれる人にしか支援されたくないと思ってる堅苦しい人間です。愛してくれる人にはとことん甘えますが、ちがう理由で近づく人からは支援は受けません。どんなささやかな支援も。……それから、愛する人の言うことに気を悪くすることはまったくありません。ぼくなりに人から受ける恩恵は選択して判断したいんですが、ぼくには根本的な知恵がないので、判断したことが正しいかどうか自信が持てません」
 キッコが膝にすがりついて、
「正しいに決まってまっせ。知恵のかたまりやさかい。……どにもいかんでね」
「みんなを愛してるのに、どこにもいくはずがない。と言うより、どこにもいくところがないんだ。北村席か、女のところか、野球場しかね」
 座敷じゅうに拍手が上がった。トモヨさんは私の腕を固く握り、肩に頬を寄せた。あごにキスをして離れ、ピタリと脇に坐った。




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